Long Wave / Jeff Lynne

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ELO時代の代表曲を再録音した新ベスト『ミスター・ブルー・スカイ』と同時にリリースされた、こちらはソロ名義によるカヴァー・アルバム。ソロ名義でのフル・アルバムということになると1990年の『アームチェア・シアター』以来ってことで。まさに待望の1枚です。

選曲もなかなか。わりと近年の曲としてはシャルル・アズナヴール作の「シー」くらい。あとは基本的にジェフ・リンが子供のころラジオでよく聞いていたお気に入りの曲が選ばれているとのこと。チャック・ベリー、ロイ・オービソン、エヴァリー・ブラザーズ、ドン・コヴェイ、エッタ・ジェイムズといったあたりを中心に、名匠リチャード・ロジャース作のスタンダード・ナンバー2曲と、映画『慕情』の主題歌やチャップリンの「スマイル」など…。

特にスタンダード系の曲に対する解釈が面白い。本人は無意識のうちだったようだけれど、ジェフ・リンはELO時代からいつも自作曲でディミニッシュとかオーギュメントとか、そのテの、まあ、ジョージ・ハリスン言うところの“ノーティ・コード”を多用してきていて。それはロックンロール以前の、リチャード・ロジャースとかが常用していたコードで。その時代を超えた関連性というか脈絡というか、そういうものを、本人も含め、聞き手に改めて教えてくれる1枚になっている。本人もあまり意識していなかったルーツの解明という意味でも興味深い仕上がりだ。

アレンジに関して、もっと派手な、ジェフ・リン流スペクター・サウンドのようなものを期待していたムキもあるようで。そういう耳で接すると物足りない、みたいなレビューも目にしたけれど。たぶんジェフ・リンの意図はそれと逆で。この人のアレンジって、わりと派手に聞こえるELO時代のものにしても、実はけっこうシンプル。必要最小限のラインを効果的に組み合わせることでふくよかな音像を現出させるというものだった。だからこそ、実は70年代からELOのサウンドはライヴでも再現可能だったわけだけれど。今回もその流儀にのっとって…というか、もっとその方向性を突き詰めているように聞こえる。

スタンダード曲にしても、R&Bにしても、ロックンロールにしても、オリジナル・ヴァージョンのアレンジをとりあえず全部ひっぱがし、いったん楽曲を丸裸にして、最低限必要なコードなりカウンター・ラインなりを見極めてそれらだけ再投入。ジェフ・リンらしさ満点の音の肌触りを伴ったぐっとコンパクトなサウンドで構築してみせた、と。そんな感じ。それによって、原曲の本質のようなものと、ジェフ・リンらしい音像とが無理なく共存するヴァージョンが完成した。

けっこう1曲ずつ解析していくと、ジェフ・リンを巡る謎のようなものが少しずつ解けていく感触もあり。来週のCRTはジェフ・リンまつりですから。そこでまた、みんなで飲んで食って騒いで謎解きしましょう。左の情報欄を参照のうえ、こぞってご参加ください。

アマゾンへのリンクは、なんか輸入盤はいろいろなヴァージョンがあってワケがわからないので、とりあえず国内盤のところに貼っておきました。