The Legendary Demos / Carole King
以前、来日したとき、「私、今、自伝を書いてるの。だから、しばらく新曲を書くのはお休みね」と語っていたキャロルさん。その自伝、出ました。ノージがさっそく買ってました(笑)。翻訳、出るかな。わかりませんが。その自伝出版に合わせる形で出たのがこの新作。

いや、新作といっても、タイトルを見ればわかる通り、“伝説的な”デモ音源集です。この人のデモ音源はこれまでもCDのボーナス・トラックになっていたり、ブートまがいのレーベルからまとめてリリースされたりしていたけれど、こうしてオフィシャルな形でまとめてもらえるとやっぱりうれしい。年代的には1961~1970年に録音されたデモ音源が集められている。

モンキーズ、タートルズ、ボビー・ヴィー、アレサ・フランクリン、イネス&チャーリー・フォックス、エヴァリー・ブラザーズ、ジーン・ピットニー、ライチャス・ブラザーズらへの提供曲から、「ビューティフル」「ウェイ・オーヴァー・ヤンダー」「イッツ・トゥー・レイト」「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」など必殺の『タペストリー』の収録曲群まで。

デモ・テープ・マジックという言葉があるくらいで、大方、完成ヴァージョンよりもデモ・ヴァージョンのほうが余計な邪気がなくてよかったりするわけですが。特にキャロルさんのデモというのは、なんだかものすごく魅力的だ。素の歌心みたいなものが前面に出ていて。心がわしづかみにされる感じ。バンド入りのものもあるし、ピアノ弾き語りのものもあるし。でも、弾き語りものでも、すでにすべての要素が入っているというか。重要なオブリガードはちゃんとデモの段階で盛り込まれていて。それもまた大切な作曲家の仕事なのだなと再確認できる。

彼女にインタビューさせてもらった際、自分のことをソングライターだと思っているか、それともシンガーだと思っているか…と質問してみた。彼女はこんなふうに答えてくれた。

「もともと子供のころからソングライターになりたかったの。ミュージカルが大好きで、クラシックも好きで。そういう曲を作れるようになりたかった。だから60年代にアルドン音楽出版とソングライター契約したときは本当にうれしかった。夢がかなった気分。でも、曲を書いても歌ってきかせる人がいないと伝わらないから、なんとなく自分で歌うようになっただけ。自分では今でもソングライターだと思ってるわ。70年代、ジェームス・テイラーのバックでピアノを弾いたとき、彼が“自分でも歌え、歌え”ってうるさく言うもんだから、仕方なく自分でも歌い始めたんだけど。彼のすすめがなかったら、こんなに頻繁に歌うようにはならなかったと思う」

で、それに対して、ぼくが“でも、あなたの楽曲をもっとも輝かせるのはあなた自身の歌声だと思いますよ”と返したら――

「どうかしら。アレサ・フランクリンとかセリーヌ・ディオンが歌う『ナチュラル・ウーマン』を聞くと、もう平伏すしかないでしょ(笑)。ただ、私が歌うともっとストレートな表現になるから。彼女たちと私との切り口の違いを楽しんでもらえていれば、それでうれしいわ」

と、答えてくれたので、もう一押し、“いや、絶対あなたのヴォーカルのほうがいいですよ”と突っ込んでみたら――

「ありがとう。実は私もそう思ってる(笑)」

と、いたずらっぽい笑顔を炸裂させていた。キャロルさん、かわいいんだ。