Time Together / Michael Franks (Shanachie Records)5年ぶり。シャナーキーに移籍しての第一弾アルバムだ。大学生時代、76年だったか、渋谷の〈BYG〉でこの人のセカンド・アルバム『ジ・アート・オヴ・ティー』を初めて耳にしたときの静かな衝撃はいまだ忘れない。繊細な、ちょっと弱々しい歌声で、ハイセンスなメロディと、どこか理屈っぽいような、ややこしい語感を含む知的な歌詞を綴る、あのクールな感触に思い切りやられた。バックを固めるジョー・サンプル、ウィルトン・フェルダー、ラリー・カールトン、ジョン・ゲランらの洗練と躍動とを絶妙なバランスで共存させた演奏も素晴らしくて。

当時、世の中では次に出た『スリーピング・ジプシー』のほうが高評価だった覚えがあるけれど、ぼくは断然『ジ・アート・オヴ・ティー』だったなぁ。モーズ・アリソンの現代版とでも言うべきその個性に、心底やられたものだ。懐かしい。

その持ち味をまったく変えることなく現在に至るマイケル・フランクス。だから、今回もそういう感じです。適度に穏やかで、適度に躍動的で、適度にキャッチーで、適度に難解で、適度にボッサで、適度にジャジーで、適度にトロビカルで、適度にノスタルジックで…。にもかかわらず、まったく中途半端な感じはしないという、これぞマイケル・フランクス・ワールドとでも言うべき鉄壁の世界観が今回も全編を貫いている。

プロデュース/アレンジはチャールズ・ブレンジッグ、ギル・ゴールドスタイン、チャック・ローブ、スコット・ペティート、マーク・イーガンらが曲によって分担。デイヴィッド・スピノザ、マイク・マイニエリ、デイヴィッド・マン、エリック・マリエンサル、ティル・ブロナー、アレックス・スピアジン、ジェリー・マロッタ、ビリー・キルソン、ロメロ・ルバムボなど、ジャズ系を中心に腕ききが勢揃いして的確なバックアップを聞かせている。この辺もいつも通りっすね。ヴェロニカ・ナンとのスウィンギーなデュエット曲もあり。ベス・ニールセン・チャップマンの歌声も聞けます。

サントロペ、パリ、エジプト、ニューヨークなどを行き来しつつ描かれる郷愁に満ちた風景や、様々な愛の情景。相変わらず禅思想っぽい言い回しも顔をのぞかせて。なんか落ち着く。おおっ!という発見はまるでないけれど、そのぶんとことん気持ちいいです。