ノンサッチを離れてサヴォイ・ジャズに移籍したビル・フリゼールの新作です。トリオ編成での録音だけど、ギター+ベース+ドラムではなく、フリゼールのギター+アイヴィン・カンのヴィオラ+ルディ・ロイストンのドラムという、独特の浮遊感と深みを感じさせるフォーマット。安らぎと緊張感と自由さと緻密さと静けさと躍動と…様々な感触が分かちがたく交錯する音世界を見事に構築している。

ヴィック・チェスナットに捧げた作品なども含むフリゼールの自作曲のほか、いつものように興味深いカヴァーがたんまり。スティーヴン・フォスター作の「ビューティフル・ドリーマー」、ブラインド・ウィリー・ジョンソンの「ノーバディーズ・フォールト・バット・マイン」、ベニー・グッドマンの「ベニーズ・ビューグル」、おなじみのジャズ・スタンダード「二人でお茶を」、リトル・アンソニー&ジ・インペリアルズのヒットでおなじみ、テディ・ランダッツォ作の必殺の名曲「ゴーイン・アウト・オヴ・マイ・ヘッド」、そしてカーター・ファミリーの「キープ・オン・ザ・サニー・サイド」。ブルース、フォーク、R&B、ジャズなど、フリゼールの幅広いアメリカ音楽への興味を反映した選曲/仕上がりだ。

エフェクトなどを駆使して“音像”を組み上げるとか、そっち方向に寄ることなく、長年活動をともにするフリゼールとカンがあうんの呼吸で魅力的な旋律をまっすぐ、有機的に絡み合わせ、そこに歌心たっぷりのロイストンのドラムが彩りを加える、みたいな。室内楽っぽいというか、ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリの現代版というか…。ノスタルジックなのに古臭くない、ごきげんな1枚です。

で、すんません、告知の繰り返しになりますが。9月19日、上野での『したまちコメディ映画祭』に関する詳細はこちらを、10月2日、福岡での『萩原健太の音楽夜話:あのミュージシャンに学べ』に関してはこちらを、それぞれご参照ください。たくさんのお越し、お待ちしてます!