「(ゲット・ユア・キックス・オン)ルート66」。そうです。ボビー・トループ作のあのグルーヴィな名曲。ナット・キング・コールからチャック・ベリーまで、幅広いアーティストにカヴァーされてきた曲なので、人それぞれ好きなヴァージョンは様々だろうけど。ぼくにとっての決定版は、疑いなく、アスリープ・アット・ザ・ホイールが76年にリリースしたアルバム『ホイーリン・アンド・ディーリン』に収められていたごきげんなカントリー・ブギー・ヴァージョンだ。

その後もライヴ・アルバムが出るたびに彼らはこの曲をテーマ曲代わりって感じで取り上げているし。確か90年代アタマだったと思うけれど、アメリカでルート66開通66周年の年に、シカゴからセントルイス、ジョプリン、オクラホマ・シティ、アマリロ、ギャラップ…などを経てロサンゼルスまで、歌に登場する通過点をずーっと辿っていく記念ツアーが行われて。そのとき中心的な役割を果たしたのもアスリープ・アット・ザ・ホイールだったし。カヴァー曲ながら、いつしか彼らにとっても当たり曲になったわけだけれど。

そんな彼らに、この曲をブギー・アレンジにしてカヴァーしてみては? と提言したのがウェスタン・スウィングの王者、ボブ・ウィルズ&ヒズ・テキサス・プレイボーイズのメンバーだったレオン・ラウシュだったらしい。74年のことだとか。まだデビューしたてだったアスリープにとっては、まさに神からの啓示だったんじゃないかなぁ。

というわけで、そんな古い付き合いになるレオン・ラウシュを共演パートナーに迎えたアスリープ・アット・ザ・ホイールの新作。出ました。ウィリー・ネルソンを共演パートナーに迎えた前作に続く、胸ときめくコラボレーション・アルバムだ。

レオン・ラウシュがテキサス・プレイボーイズにヴォーカリストとして加入したのは58年。まあ、テキサス・プレイボーイズの場合、黄金時代は30~40年代で。その当時のヴォーカリストだったトミー・ダンカンあたりに比べると、ちょっと地味な存在ではあるのだけれど。後期のリバティ音源で聞くことができる必殺のジャジーなバラード「ゴーイング・アウェイ・パーティ」などラウシュの名唱も数多い。あの声がさらに渋みと深みを増してここに記録されています。現在83歳ながら、いまだ現役で音楽活動を続ける男の力強い歌声と柔軟な歌心がたまりません。

レイ・ベンソン率いる現在のアスリープ・アット・ザ・ホイールも絶好調。生楽器の深々とした“鳴り”をうまくとらえた録音もいい。ボブ・ウィルズのレパートリーはもちろん、ペギー・リーのアルバム・タイトル曲、クリフ・ブルナー作の「トラック・ドライヴァーズ・ブルース」、ジョー・ウィリアムス/カウント・ベイシーの「オールライト、オーケイ、ユー・ウィン」など、スウィンギーな選曲がなされていて。ごきげんだ。「トラック・ドランヴァーズ・ブルース」ではウィリー・ネルソンも客演してます。あ、もちろん「ルート66」もやってます。

こういう深く豊かな音楽が過去たくさん生まれて、今なお躍動的に生き続けていて…。こういうの聞いていると、新しいからどうしたとか、今の空気感がどうしたとか、音楽をめぐってよく耳にする価値観がいかに曖昧で近視眼的なものか、思い知りますよ。