ニューオーリンズの裏も表も知り抜く男の新作。この人、特にハリケーン・カトリーナが愛する故郷を無残なまでにずたずたにして、アメリカの深層に潜む多くの問題がいまだ何ひとつ解決できないまま放置されていたのだという衝撃の事実を明るみに出して以降、若いころ以上の凄みをもって音楽活動に打ち込んでいるみたい。

今回もブルース、ジャズ、R&B、ファンク、フォークなど、ニューオーリンズに渦巻く様々な音楽要素を有機的に合体/融合させて、いきいき躍動してみせるわけだけれど。その眼差しはいつになく真摯。まだ歌詞をちゃんと把握できていないのだけれど、「ビッグ・ギャップ」とか「オンリー・イン・アメリカ」とか、その辺の曲には自らの故郷をめぐる政治的/社会的なメッセージもかなりストレートに盛り込まれている感じ。ニューオーリンズという音楽の宝庫に眠る過去の芳醇な文化を掘り起こして世の中に紹介するという役割を果たしてきた男が、今、彼の地の現在をも生々しく伝える役割を担い始めたということかな。

故ボビー・チャールズとの共作が3曲入っていて。泣ける。そのうち、ニューオーリンズならではのごきげんなピアノ・フレーズとサザンR&B味とがポップに合体した「チェンジ・オヴ・ハート」が特にぼくのお気に入り。デレク・トラックスの粘っこいスライド・ギターと、ずぶずぶにグルーヴするリズム隊との絡みが絶妙なヴードゥー・ブルース「マヌーヴァズ」も凄みたっぷり。他にもアラン・トゥーサンが2曲提供していたり、ドナルド・ハリソンがごきげんなアルト・サックスを聞かせていたり。

曲順が微妙に前後している14曲入りのフォーマットもあるみたいだけど。ぼくが買ったのは16曲入りのやつ。曲は多いほうがいいっすよね(笑)。