アーケイド・ファイアの新作。アルバム・タイトルからもじんわりと感じられる通り、これまでの2枚と比べて、過去へのこだわりがさらに強くなっているような…。全編に漂う喪失感とか、諦観とか。それがなんとも魅力的な仕上がりです。悩める青年たちのメランコリックなポップ・ミュージックという感じ。でも、最終的にはどこか楽観的なムードがすべての曲を支配していて。その辺がこの人たちの味ってことっすかね。

今回もまた60年代、70年代、80年代といった古い時代のポップ・イディオムを深い敬意のもとでたくさん引用している。クラシック、ジャズ、ブルース、フォークなど、ロックンロール以前の音楽に対する憧れまじりの眼差しも好感度たっぷり。てことで、音楽性の幅はかなり広範囲に及ぶので、聞く人によってはとっちらかった印象を抱く可能性もあるけれど。でも、彼ら独特の翳りを帯びた音像と、相変わらず青さを失わない歌声とが全体に見事な統一感を与えている。

おっさん世代の音楽ファンとしては、そのあたりの青さがやけにまぶしくて、聞いていて気恥ずかしくなる瞬間もないわけじゃないけど。往年のキンクスあたりを想起させるノスタルジックかつシニカルなムードには世代を超えて抗いきれない何かがある。若い世代のリスナーにはどうだかわからないけど、今50代のぼくにはブルース・スプリングスティーンやニール・ヤングの後継っぽく響く曲もあったりします。

そういえば、以前ヴァン・ダイク・パークスにインタビューしたとき、ノスタルジアって言葉には“ホーム”という意味と、“ペイン”という意味と、ふたつが含まれていると話してくれた。もともとはギリシャ語だとか言ってたな。故郷、そして心の痛み。まるでこのアーケイド・ファイアの新作のためにあるような言葉かも。今回もオーウェン・パレットがストリングスでいい仕事してます。